モダン・ローズ(2007年) - 1
〈もくじ〉
(1) HT「エイプリル・イン・パリ(Rosa 'April in Paris')」
(2) Sh「エロディ・ゴシュアン(Rosa 'Élodie Gossuin')」
(3) HT「カリフォルニア・ドゥリーミン’(Rosa 'California Dreamin' ')」
(4) Sh「ザ・シェパーディス(Rosa 'The Shepherdess')」/ER
(5) Sh「スカイラーク(Rosa 'Skylark')」/ER
(1) HT「エイプリル・イン・パリ(Rosa 'April in Paris')」
HT「オフィーリア(Rosa 'Ophelia')」、HT「クリムゾン・グローリー(Rosa 'Crimson Glory')」、HT「ピース(Rosa 'Peace')」、 HT「スヴニール・ドゥ・クロディウス・ペルネ(Rosa 'Souvenir de Claudius Pernet')」、Ft「ロサ・フォエティダ・ビコロール(Rosa foetida var. bicolor)」、Ch「パークス・イエロー・ティ=センティッド・チャイナ (Rosa 'Parks' Yellow Tea-scented China')」、Sp「ロサ・ロクスブルギー(Rosa roxburghii)」、Sp「ロサ・ルビギノーサ(Rosa rubiginosa)」他の子孫。
樹高 1.2~1.5m
花色は桃色で花径9~11cm、花弁30~40枚の半剣弁高芯咲き。香りはスパイス系の強香。
作出: 2007年、アメリカ
作出者: ドクター・キース・W・ザリー(Dr. Keith W. Zary)
2008年にジャクソン&パーキンス社(Jackson & Perkins、 Wholesale)がアメリカ市場に導入。
HT「エイプリル・イン・パリ(Rosa 'April in Paris')」
交配: HT「プリスティーン(Rosa 'Pristine')」 × HT「ニュージーランド(Rosa 'New Zealand')」
・ HT「プリスティーン(Rosa 'Pristine')」
1975年以前にアメリカで作出された、花色は白色で花弁の縁が淡桃色、花径は12~15㎝で花弁26〜30枚の剣弁高芯咲き。作出者はウィリアム・A.・ウォリナー(William A. Warriner、1922年頃~1991年)
・ HT「ニュージーランド(Rosa 'New Zealand')」
1985年にニュージーランドで作出された、花色は淡桃色で花径14~15cm、花弁25~35枚の半剣弁高芯咲き。香りはフルーツ系の中~強香。作出者はサミュエル・ ダラー・マグレディ4世(Samuel Darragh McGredy IV、1932~2019年)
HT「オフィーリア」、HT「クリムゾン・グローリー」、HT「ピース」、 HT「スヴニール・ドゥ・クロディウス・ペルネ」、Ft「ロサ・フォエティダ・ビコロール」、Ch「パークス・イエロー・ティ=センティッド・チャイナ」、Sp「ロサ・ロクスブルギー」、Sp「ロサ・ルビギノーサ」他の子孫。
HT「エイプリル・イン・パリ(Rosa 'April in Paris')」
☆ 花の名前
バラ「April in Paris/エイプリル・イン・パリ/4月のパリ」ですが、この花名は、ジャズ・スタンダードの一つとして有名な『April in Paris』に因むのではないかと思っています。
『エイプリル・イン・パリ』は、もともとは1932年にブロードウェイ・ミュージカル『Walk a Little Faster(ウォーク・ア・リトル・ファスター)』のために作られた曲だそうです。
作曲はロシア生まれの作曲家「Vernon Duke(ヴァーノン・デューク)/本名: Vladimir Alexandrovich Dukelsky(ヴラジーミル・アレクサンドロヴィチ・ドゥケーリスキー)、1903~1969年」、作詞はニューヨークのマンハッタン生まれでユダヤ系アメリカ人の「Edgar Yip(Yipsel) Harburg(エドガー・イップ(イプセル)・ハーバーグ)/本名: Isidore Hochberg(イシドア・ホックバーグ)、1896~1981年」。
曲は、「April in Paris, chestnuts in blossom(4月のパリ、マロニエは満開)」で始まります。
このバラの花色が、パリのマロニエの桃色の花色を連想させた結果の命名ではないかと思うのですが…。
(2) Sh「エロディ・ゴシュアン(Rosa 'Élodie Gossuin')」
樹高 0.8〜1.2m
花色は桃色で花径6~8cm、花弁40枚ほどの丸弁カップ咲きで咲き進むとロゼット咲き。香りはフルーツ系の強香。
作出: 2007年以前、フランス
作出者: ドミニク・マサド(Dominique Massad、1955年生)
2008年にギヨー社(GUILLOT)がフランス市場に導入。
交配: 不明または未発表
Sh「エロディ・ゴシュアン(Rosa 'Élodie Gossuin')」
☆ 花の名前
このバラの名前は、フランスの美人コンクールのタイトル保持者で、モデル、テレビ・ラジオの司会者の Élodie Gossuin(エロディ・ゴシュアン、1980年生)に因むそうです。
Élodie Gossuinは、2001年の第50回ミス・ユニバース世界大会(Miss Universe 2001)にミス・フランスとして参加し、「トップ 10」にランクされたそうです。
(3) HT「カリフォルニア・ドゥリーミン’(Rosa 'California Dreamin')」
HT「ピース」の孫で、HT「オフィーリア」、HT「クリムゾン・グローリー」、HT「スヴニール・ドゥ・クロディウス・ペルネ」、Fl「ピノッキオ(Rosa 'Pinocchio')」他の子孫。
樹高 1.2~1.5m
花色は乳白色で花弁縁が桃色の覆輪、花径13~15cmで花弁35~45枚の半剣弁高芯咲き。香りは柑橘系の強香。
HT「カリフォルニア・ドゥリーミン’(Rosa 'California Dreamin' ')」
作出: 2007年、フランス
作出者: ジャック・ムショット(Jacques Mouchotte、1954年生)
メイアン・インターナショナ社(Meilland International)が 「California Dreamin'」の花名でフランス市場に導入。
2009年に、コンラッド・パイル社(Star Roses and Plants/The Conard-Pyle Company)が「California Dreamin'」の花名でアメリカ市場に導入。
HT「カリフォルニア・ドゥリーミン’(Rosa 'California Dreamin' ')」
交配
母木: HT「プリンセス・ドゥ・モナコ(Rosa 'Princesse de Monaco')」
花粉親: Gr「ソニア(Rosa 'Sonia')」 × Fl「ウーヴェ・ゼーラー(Rosa 'Uwe Seeler')」
・ HT「プリンセス・ドゥ・モナコ(Rosa 'Princesse de Monaco')」
1971年にフランスで作出された、花色は乳白色で花弁縁が桃色の覆輪、花径12cmで花弁35~45枚の半剣弁高芯咲き。香りはティ系の中香。
作出者はマリー=ルイーズ・メイアン(Marie-Louise Meilland、1920~1987年)
1981年にメイアン社(Meilland et Cie)が「Princesse de Monaco」の花名でフランス市場に導入。
HT「ピース」の子で、HT「オフィーリア」、HT「クリムゾン・グローリー」、HT「スヴニール・ドゥ・クロディウス・ペルネ」、Fl「ピノッキオ」他の子孫。
・ Gr「ソニア(Rosa 'Sonia')」
1973年以前にフランスで作出された、花色がサーモン・ピンクで花径8~12㎝、花弁数25~30枚の半剣弁高芯咲き。香りはティ系の中香。作出者はマリー=ルイーズ・メイアン(Marie-Louise Meilland、1920~1987年)
HT「ピース」の曽孫で、HT「クリムゾン・グローリー」 と Fl「ピノッキオ」の玄孫、 HT「オフィーリア」 と HP「フラウ・カール・ドルシュキ(Rosa 'Frau Karl Druschki')」他の子孫。
・ Fl「ウーヴェ・ゼーラー(Rosa 'Uwe Seeler')」
1970年以前にドイツで作出された、花色は赤橙色で花弁9~16枚の半八重で剣弁高芯咲き。作出者はライマー・コルデス(Reimer Kordes、1922~1997年)
HT「ピース」の玄孫で、HT「オフィーリア」、HT「クリムゾン・グローリー」、HT「スヴニール・ドゥ・クロディウス・ペルネ」、Ft「ロサ・フォエティダ・ビコロール」他の子孫
HT「カリフォルニア・ドゥリーミン’(Rosa 'California Dreamin' ')」
☆ 花の名前
このバラの名前は、1960年代後半のヒット曲『California Dreamin'(カリフォルニア・ドゥリーミン)』と関係があるのではないかと考えました。
『California Dreamin'』 は、1965年に発表されたアメリカのフォーク・ロック系グループ「The Mamas & the Papas(ザ・ママス&ザ・パパス)」の代表曲の一つで、日本では『夢のカリフォルニア』の邦題で流行ったと記憶しています。
作詞・作曲はグループのメンバーの「John & Michelle Phillips(ジョン&ミシェル・フィリップス)」で、「木々の葉は枯れ、空は灰色の冬の或る日、私はカリフォルニアを夢見ている。もし、ロサンゼルスにいるのだったら、暖かく安穏に過ごせるだろうにと。」といった雰囲気の曲です。
HT「カリフォルニア・ドゥリーミン’(Rosa 'California Dreamin' ')」
このバラの交配親のHT「プリンセス・ドゥ・モナコ」からの連想で、『California Dreamin'』 を思い浮かべたのでは?
交配親のHT「プリンセス・ドゥ・モナコ」の花名は、ハリウッドの映画俳優であったグレース・ケリー(Grace Kelly、1929~1982年)に因むそうですので、映画スタジオのあるカリフォルニア州ロサンゼルス市ハリウッド地区(Hollywood, district within the city of Los Angeles, California, U.S.)に思いを馳せての命名と考えたのですが…。
(4) Sh「ザ・シェパーディス(Rosa 'The Shepherdess')」/ER
樹高 0.9~1.5m
花色は淡杏色で花径7~8cm、花弁45枚ほどのカップ咲き。香りはフルーツ系の中~強香。
作出:2007年、イギリス
作出者: デイヴィッド・チャールズ・ヘンショー・オースティン(David Charles Henshaw Austin、1926~2018年)
交配: 未公開
Sh「ザ・シェパーディス(Rosa 'The Shepherdess')」/ER
☆ 花の名前
英語で羊飼いには、男女とも「shepherd(シェパード)」という言葉が使われ、女性の羊飼いの場合は「shepherdess(シェパーディス)」も使われるそうです。
「shepherdess(シェパーディス)」はやや古い言い回しで、「牧歌(pastoral)に詠われる羊飼いの娘」などに使われる言葉のようです。
牧歌(pastoral)は、田園を舞台に羊飼いたちが登場する詩歌や楽曲ですが、ラテン語の「pastor/パーストル、パストル/羊飼い」が語源とのことです。
このバラの名前については、エリザベス朝時代の詩人で廷臣・軍人であったサー・フィリップ・シドニー(Sir Philip Sidney、1554~1586年)のイギリス・ルネッサンスの牧歌的ロマンス『Arcadia(アーケイディア)』(*)に登場する「The Shepherdess(女羊飼い)」に因むようです。
Sh「ザ・シェパーディス(Rosa 'The Shepherdess')」/ER
(*) 『Arcadia(アーケイディア)』は、3種類存在するそうです。
① は、 1580年の夏頃に完成したとされる5巻の『初稿(The Old Arcadia)』
② は、 後にシドニーが改定を始め、最初の3巻のほとんどは書き上げ、その死によって未完に終わった『改訂版(The New Arcadia)』(未完成のままシドニーの友人たちが1590年に出版)
③ は、 シドニーの実妹ペンブローク伯爵夫人(Countess of Pembroke)が、1590年出版の『改訂版』を不服として、シドニーの改定済の原稿に残りの部分の初稿(3巻後半、4巻、5巻)を修正して継ぎ足して、完成版として1593年に出版した『Countess of Pembroke's Arcadia(ペンブローク伯爵夫人のアーケイディア)』
(5) Sh「スカイラーク(Rosa 'Skylark')」/ER
樹高 0.9~1.0m
花色は桃色で花径7~8cm、半八重~八重のカップ咲き。香りはムスク系+ティー系の中~微香。
作出:2007年、イギリス
作出者: デイヴィッド・チャールズ・ヘンショー・オースティン(David Charles Henshaw Austin、1926~2018年)
交配: 未公開
Sh「スカイラーク(Rosa 'Skylark')」/ER
☆ 花の名前
「Skylark(スカイラーク)」は英語で、「ヒバリ(雲雀)」のことです。
命名の理由は、[モダン・ローズ(2006年) - 2] に載せた「シスター・エリザベス(Sister Elizabeth)」が デイヴィッド・オースティン・ローゼズ・リミテッド(David Austin Roses Limited)初訪時に ヒバリが鳴いていたことによるそうです。
シスター・エリザベスの名に因むバラ Sh「シスター・エリザベス(Rosa 'Sister Elizabeth')」は2006年に命名されていて、Sh「スカイラーク(Rosa 'Skylark')」は、1年遅れで命名されています。